サファイアガラスのモース硬度は9であり、ダイヤモンドに次ぐ固さを誇っています。また耐熱性が高く、変形・傷に強い透明材として様々な箇所で利用されています。

一般的なガラスとサファイアガラスの違い

アクリル板やポリカーボネートの熱変形対策

腕時計のカバーガラスなどにも利用されるプラスチック材ですが、熱に弱く温度によっては変形してしまうことがあります。

そのため、高価な腕時計ではサファイアガラスがよく利用されています。また価格の面でも宝飾品をイメージすると高価なイメージがありますが、特注品ではなく百枚単位の量産を行った場合、1枚数百円程度になることも珍しくありません。
詳しくは参考価格をご覧ください。

ガラスの変形・傷対策

多くの物質は加熱により膨張します。一般的なガラスも例外ではなく、熱膨張率が高いために変形することがあります。

また一般のガラスに比べホウケイ酸ガラスや石英ガラスは熱膨張係数が小さいため、様々な研究の現場や光学素材として利用されていますが、融点は900℃前後と高いわけではないため、ある一定の条件下では利用できないことがあります。また強度の問題でガラスが使えない場面もあります。

サファイアガラスはガラスに比べ、融点が2050℃と二倍程度ある上、熱伝導率がよく硬いために、ガラスではまかなえない範囲の部材に利用されることがよくあります。

透明な平板の変形対策

研究室などでは、アクリルなどの透明材の平板を利用し、撮影や測定を行うことがありますが、条件によっては、一般的なガラスやアクリル板などでは強度が弱かったり、熱耐性の問題で利用できないことがあります。

そのような場面でもサファイアガラスの平板を利用することで実験がスムーズに行え、かつ耐久性が高いため長持ちする機材を製作することができます。

変形・傷に強い強化ガラスとサファイアガラスの違い

ガラス素材を変形・傷に強くするために化学強化したガラスのことを、一般的に「強化ガラス」と呼ばれています。
強化ガラスとは、次の3点の強度を上げるべく技術アクションを講じたガラスのことで、ガラスの表面に圧縮層を形成し、ガラスが外力による衝撃を受けたとき、破壊に対する抵抗性を高めています。

  1. 圧縮応力
  2. 硬度
  3. 曲げ強度

強化ガラスの強度は、強化処理の仕方で多少異なった結果が出ていますが、
風冷強化方法で作った強化ガラスは、通常のガラスに比較して、3倍の強度が
あると言われていますし、化学強化方法で作った強化ガラスは、5倍の強度が
あると一般的に言われています。

一方でサファイアガラスは、ダイヤモンドに次ぐ硬度をもち、耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性を備えたアルミナの単結晶です。

サファイアガラスと強化ガラスを比較すると、サファイアガラスの方が圧倒的に優位です。
サファイアガラスは、外部からの衝撃に対する圧縮応力が強化ガラスよりも数倍高く、また「物と物」を擦り合わせたときにできる表面のキズがつきづらくなっています。

強化ガラス白板ガラス青板ガラスサファイア※注
圧縮応力
Mpa
7855885492950化学強化後
硬度 sHv
ビッカース
6405705701200(300g 15sec)
曲げ強度
Mpa
863637618686
※注)強化ガラスは市場で見られる商品の一例です。

強化ガラスとサファイアガラスの加工の違い

ガラスを強化して強化ガラスにする方法として「化学強化方法」「風冷強化方法」があります。

強化ガラスの一次加工

化学強化方法

強化処理をしたいガラスを、カリウム( K )イオンを含有した溶液に浸漬すると、ガラスの中のナトリウム( Na )イオンが放出され、カリウムイオンがガラスの表面層に進入していきます。
カリウムイオンは、ナトリウムイオンよりサイズが僅かに大きいので、ガラスの表面に圧縮応力層が形成されます。

風冷強化方法

強化処理をしたいガラスを、約700℃まで加熱し、それに冷風をあて「焼きを入れる」ことにより、ガラスの表面層と内部に密度差ができます。
これがガラスの表面の圧縮応力層となります。

強化ガラスの二次加工

上記いずれの方法で加工された強化ガラスは、表面に圧縮応力層を形成していることから、二次加工は強化処理後にはできません。
製品形状は、強化プロセス以前に完成していることが大切です。

サファイアガラスの加工

サファイアガラスは二次加工は可能です。

しかし加工方法は強化ガラスとはまったく異なります。
「切断する」「穴あけする」「成形する」「研摩する」等の加工は、全てダイヤモンドツールによる削り出しで行います。
型押しすることや、溶着することは単結晶品のためできません。

サファイアガラスは、物理的特性・熱的特性・機械的特性・光学的特性・化学的安定性など優れた特性を持っています。
近年ではスマートフォンやセンサーカバーなど傷がつきやすい工業材料にも使われるようになりました。

人工的に育成・化学的に強化された高純度単結晶サファイアは、LED基板、半導体基板、光デバイス用基板、医療用部品、宇宙船の窓、宝飾品、時計の風防など幅広い分野において、変形や傷に強いガラスとして活用されています。

お気軽にご相談ください

もし現在お使いの素材の変形や傷やカケなどでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。無料サンプルの貸し出しも行っております。