サファイアの耐熱性
サファイアの特性のひとつとして、耐熱性に優れている点が挙げられます。耐熱性とは、高温環境下においてその物性を維持する性質のことです。
サファイアガラスは下記の特性(耐熱性)比較表からも明らかなように、一般的なガラス(青板ガラス)やプラスチック(アクリル樹脂)と比較すると、数十倍高い熱伝導率となっています。熱が全体にすばやく伝わる、極めて高い熱伝導性を持った素材です。
また低温環境下においても熱伝導率が高いため、耐腐食性や光透過性・耐熱性の特性と合わせて、極低温環境における放熱素材としても活用されています。
一方でサファイアは熱膨張率が大きいため、熱衝撃に弱く、急激な温度変化には向いていません。
サファイアの特性(耐熱性)比較
サファイア | 青板ガラス | プラスチック (アクリル樹脂) | |
---|---|---|---|
溶融点 (℃) | 2053 | 730(軟化点) | 100(軟化点) |
熱伝導率 (W/m・k) | 42 | 1 | 0.21 |
熱膨張率 (1/℃) | 50 × 10-7 | 85 × 10-7 | 590 × 10-7 |
耐熱ガラスとして、サファイアガラスがどのように優れているか
一般的によく耳にする耐熱ガラスとは、急激な温度変化を与えても割れないように強化したガラスのことを言います。
耐熱ガラスで、耐熱認証マークがついて保障されている耐熱温度は120℃です。またガラスの溶融点は最高780℃です。
耐熱性についてもう少し詳しく分解すると、次の4項目から考えられます。
- 熱伝導性
- 放熱性
- 熱膨張率
- 溶融温度
熱伝導性が高いガラスは、放熱性も高いと言われています。
熱伝導性が高いガラスは、急激な温度変化が加わったとき、その温度がいち早くガラス全体に伝わります。
しかし急激な温度変化による熱衝撃によって、どこにもひずみが起きない「割れないガラス」は、残念ながら現在の世の中には存在していません。
現在の耐熱ガラスは、熱膨張率を下げることによって、熱衝撃によるひずみを小さくしガラスを割れにくくしています。
また、温度上昇スピードを極ゆっくり行った場合、その物質が固体としての形状が維持できなくなり溶融し始める温度を、溶融温度と言います。
一般的な耐熱ガラスの溶融温度は、780℃以下であると言われています。
一般的な耐熱ガラスは、耐熱性の4つの特性に限界特性を有しています。
一方で、サファイアガラスは下記の耐熱比較表からも明らかなように、熱伝導性・放熱性・熱膨張率・熱伝導率など、いずれも一般的なガラスの中でも優位に立っているのです。
また物理的な圧縮強度もガラスに比較して数段優れており、光透過物その物の厚さを薄くすることが できる点などから、耐熱性には非常に好条件がそろった素材と言えます。
耐熱ガラス比較
ダイヤモンド | サファイア | 石英 | ガラス | |
---|---|---|---|---|
溶融点 ℃ | ー | 2030~2050 | 1600 | 590~780 |
熱膨張係数 10-7cm/℃ | 9.0~11.8 | C軸垂直 50 C軸平行 67 | 80 | 80~100 |
熱伝導率 | 9~20w/cm2k | 0.042w/m2k 0.06(100℃) g・cal/cm sec℃ | 0.0158~0.0299 g・cal/cm sec℃ | 0.0014 g・cal/cm sec℃ |
高耐熱性を活かしたサファイアの使用条件例
半導体プロセスの使用条件や、ルツボや圧力センサー等の使用条件、そしてサファイアガラス基板上への蒸着条件などを見ても、ガラス使用時代では考えられない超高温での作業環境が実現しています。
- 圧力センサー 耐熱温度上限 300℃ 実験 500℃ OK
- 半導体プロセスガスの多様化で耐高温・耐腐食性が必要
- 弗化水素・硫酸・硝酸・塩酸 300℃の高温にも耐える。殆ど腐食もされない。
- 金属の融液 Mg Cr Co Ni Na K Bi Zn Cs 800~1000℃でも OK
- サファイアガラス管・ルツボなどは、1850℃でも常用可能
- UV殺菌・プラズマエッチング・高圧力測定に適材
- サファイア基板上への蒸着は 1500℃でも OK (耐熱性・科学的安定性)
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