単結晶サファイアの特徴

単結晶サファイアとは

単結晶サファイアは、高純度のアルミナ(Al2O3)を人工的に巨大結晶に成長させたもので、俗にサファイアガラスと呼ばれています。

酸化アルミニウム (Al2O3) の結晶からなる鉱物「コランダム」の純粋な結晶は無色透明です。そこに不純物が含まれることにより色が変化することから、古くから宝石として親しまれてきました。

アルミナ(Al2O3)に微量のクロム(Cr)が混ざると赤く発色してルビーに、鉄(Fe)やチタン(Ti)が混ざると青く発色してサファイアになります。

サファイアは、物理的特性・熱的特性・機械的特性・光学的特性・化学的安定性など優れた特性を持っており、人工的に育成・化学的に強化された高純度単結晶サファイアが、産業分野などさまざまな分野で活用されています。

化学的な構造は、宝石のサファイア、ルビー(コランダム・硬玉)とほとんど同じですが、純度という観点からみれば宝石よりも混ざり物のない純粋な無色透明の結晶体です。

サファイアとアルミナの違い

サファイアと同じ化学式Al2O3で表されるアルミナセラミックス。
サファイアとアルミナは同じ酸化アルミニウム(通称:α-アルミナ)を原料としたコランダム型結晶構造ですが、サファイアは単結晶、アルミナセラミックスは多結晶、という違いがあります。

単結晶

構成原子が粒子全体にわたってすみからすみまで規則正しく並んでいる固体

多結晶

さまざまな大きさの細かい単結晶の粒が集まっている集合体

規則的な構造をもつ単結晶サファイアは、サファイアが持つさまざまな優れた特性を最大限引き出しています。

単結晶サファイアの特性

さまざまな分野で活躍する優れた特性

単結晶サファイアは、熱的・機械的・光学的特性・化学的安定性などにおいて優れた特性を持っています。

・機械的特性

ダイヤモンドに次ぐ高強度・高硬度をもち、耐摩耗性も高いため傷がつきにくい性質があります。
他のガラスに比べてはもちろんのこと、金属材料に比べても優れた機械特性をもち、対磨耗部品を中心に、機械部品への応用が広まっています。また、高級腕時計の風防にも使われており、近年ではスマートフォンやセンサーカバーなど傷がつきやすい工業材料でも活用されています。

・光学的特性

紫外光から赤外光の広領域での透明度の高さ(光透過性)があり、耐摩耗性、耐熱性ともあいまって、各種実験装置など極環境での窓材、また偏光性や複屈折特性を利用したフィルター等にも使われています。

・熱的特性

溶融点は2040℃、1800℃の高温まで安定的に使用することができる、非常に高い耐熱性・高温安定性を持っています。また熱伝導性にも優れているため、高温・高圧環境下でも多く採用されています。

・化学的特性

化学的安定性があり、耐食性・耐薬品性が高く、半導体プロセスで使われる工業薬品にも不溶であるため、半導体製造装置用部品等でも広く使われています。

・電気特性

極めて低い誘電損失、安定した誘電率、絶縁性といった電気特性により、高周波帯域での基板材料、絶縁材料として使用されています。

サファイアのさまざまな優れた特性を活かして、LED基板、半導体基板、光デバイス用基板、医療用部品、宇宙船の窓、宝飾品など幅広い分野において単結晶サファイアは活躍しています。

単結晶サファイアの欠点

多くの産業分野で活躍する単結晶サファイアですが欠点もあります。

  • 高い溶融点のため、サファイアの合成にエネルギーを大量に使用。
    そのため材料原価が高い。
  • 非常に硬い特性のため、加工にはダイヤモンドを使用せざるを得ない。
    そのため加工コストが高い。
  • 硬い反面、靭性に欠けるため、チッピング等のカケが発生し易い。
  • 結晶材料のため、特性が結晶の軸方向に左右される。

サファイアには欠点を補って余りある優れた特性があり、発展途上の工業材料で、産業各分野において重要度を増しつつあります。

単結晶サファイアの製造・加工

サファイアの製造・育成方法

サファイアにはいろいろな製造方法がありますが、結晶の製造方法(育成方法)には主なものにベルヌーイ法(ヴェルヌイ法)、EFG法などがあります。

ベルヌーイ法(ヴェルヌイ法・火炎溶融法)

水素と酸素のバーナーの炎の中に材料となるアルミナの粉末を降らせ、炎中を材料が落下していくうちに融け、炎通過後冷えて固まる時に再結晶し、巨大結晶となります。
最大の特徴は2000度を超えるサファイアの溶融点に耐える容器が不用なことで、結晶は棒状をしています。

EFG法

高温のアルミナ融液に種結晶をつけてゆっくりと引き上げながら結晶を成長させます。
種結晶の形状により、板状、棒状、チューブ状などの形状の結晶ができます。また、必要とする結晶軸、結晶面で結晶を成長させることもできます。

結晶は製造過程で成長していくため、製造は「育成(growth)」と言われています。

サファイアの研磨・加工

サファイアの研磨

サファイアの研磨はダイヤモンドに次ぐ高硬度であるため、主にダイヤモンドを利用して表面加工を行います。

さまざまな使用目的・用途・形・サイズに合わせたサファイアの研磨は、通常のガラスに比べて硬く脆いため高度な研磨技術が求められます。

サファイアの研磨は以下のような方法があります。

  • 鏡面研磨
  • 光学研磨
  • レンズ研磨
  • ガラス研磨

サファイアの加工

さまざまな産業分野で活躍する単結晶サファイアですが、求められる形やサイズは用途により異なります。
サファイアは非常に硬く耐熱性のある透明体で、加工には特殊な技術と工具が必要です。

サファイアの加工工程

成形研削

ダイヤモンドホイルを用いてサファイアの素材から所定の形状を削りだします。
サファイアガラスは他のガラス素材と違い、単結晶で溶融点が非常に高い(約2000℃)ため、 型押し・溶着が事実上不可能です。

よってブロック状の素材から削りだして形状を作るのが一般的です。
素材の合成法によっては板状・棒状・チューブ状などの形状が作れますが複雑な形はできないため、研削工程が必要となります。
また、合成したままの素材は表面が荒れているので、ラッピングの下地を作るためにも 研削工程が必要となります。

板材の外周を削る芯取研削、平面を削る平面研削、球面を削るCG研削、 円筒面を削るシリンディカル研削などがあります。

ラッピング

ラップ盤に遊離砥粒を分散させ、サファイアガラスと擦り合わせて粗研磨をします。
この段階で大きなキズは消えほぼ透明状態になります。寸法調整もこの工程で行います。
砥粒にはダイヤモンドパウダーを用い、適切な粘度の研磨剤に均一に分散させて使用します。この工程をいかに正確にきれいに仕上げるかが、精度・品質のカギとなります。平面ラップ、球面ラップ、シリンディカルラップ等があります。

ポリッシング

研磨パッドに研磨剤を供給しながらサファイアガラスと擦り合わせて仕上げ研磨をし、鏡面を作ります。
この工程は研磨面の細かいキズとりと艶出しを目的とし寸法変化はほとんどありません。
研磨圧力と摩擦熱、研磨剤の化学作用によるメカノケミカルポリッシングにより表面の凹凸をより微細化します。
ポリッシング工程を短時間に済ませることが品質向上のポイントです。

平面ポリッシュ、球面ポリッシュ、シリンディカルポリッシュがあります。

お気軽にご相談ください

二光光学では、自社開発の機械を使い、すべての工程でダイヤモンド工具を用いて、成形研削から穴あけ・溝加工、研磨にいたるまで一貫加工をしています。

一個のサファイア加工からおまかせください。
図面から設計者の意図を理解し、満足いただける単結晶サファイアの加工・研磨を心がけています。